日本では2012年から全ての中学校で武道及びダンスの授業が義務化され、教育面でのスポーツの重要性がますます強くなっている一方で、学校教育以外でのスポーツの需要が高まっています。フィットネスクラブの利用者は2000年から12年余りでおおよそ2倍に伸び、小学生の習い事におけるスポーツの割合では、男子で46%と非常に高い値になっています。このように学校教育以外の様々な場面で運動、健康に関する豊富な知識が必要とされることが多くなっています。
そのような現状を受け、体育系学部では体操・体育科教員の養成のみならず、スポーツインストラクターやスポーツ組織の管理運営者の育成や近年増加する生活習慣病予防のためのスポーツのあり方など研究対象が多様化しており、「社会とのかかわり」「ビジネス」「健康増進」その他様々な領域とともに学ぶ総合科学の意味合いが強くなっています。
学系紹介
体育学系
保健体育の教員、企業内や地域でのレクリエーション指導者、スポーツインストラクター、コーチ、トレーナーなど、幅広い分野での指導者養成を目指します。指導力の向上を目指すための実践科目や実技、演習などに多くの時間を費やします。体育学の基礎科目のほか、剣道、柔道、弓道、相撲といった武道を学ぶことが出来ます。技術習得だけでなく、武道論、武道史などの専門科目もあり、武道精神を広く伝えることが出来る指導者も養成します。また、現代では高齢化が進み、肥満や糖尿病などの生活習慣病が増えていますが、スポーツや運動が、こうした疾患の予防や治療に大きな効果があることもわかってきています。そのため、体育学は「体育」と「健康」の両方を学ぶ学部と言えます。
健康科学系
健康科学は、医学を含む人間の健康に関する科学として米国で発展しました。日本でも衛生学や精神学、医学、看護学などを包括した学問として発展を続けています。健康科学系では、ライフスタイル、環境、教育、リハビリテーション、福祉などについて、広範囲に学びます。また、健康を様々な角度からとらえ、乳幼児から高齢者までの生涯にわたるライフステージを対象としています。健常者に限らず、疾患や障害の種類や程度など、人の全ての状態に目を向け、健康支援するための知識や技能、更にそれを機能させるためのシステムについて扱う総合的な学問領域です。医療系、福祉系、人間科学系、心理系、さらには、時代の要請として、環境学、経営学、情報科学と関連させながら構成している学科、コースも設置されるようになり、幅広い形態が用意されています。
ビジネス・マネジメント系
経営学、社会学などを基礎として身につけ、スポーツにおいてのマネジメントやマーケティングなどの専門分野を履修します。スポーツチームやスポーツジム、スポーツを用いての企画やイベントのマネジメント能力を持った人材を育成します。スポーツ産業や保健産業などの企画・運営・広報活動などを通じて、スポーツの普及に貢献できる人材の育成を目指します。最近では、スポーツマネジメントが注目されることに伴って、経営学部でそれを教える学科も増えています。
主な大学・学部学科一覧
大学 | 学部 | 健康科学系 | 体育学系 | ビジネス・マネジメント系 |
筑波大学 | 体育専門学群 | 体育スポーツ学 | 健康体力学 コーチング学 | |
奈良女子大学 | 生活環境学部 | 生活健康学コース | スポーツ健康科学コース | |
早稲田大学 | スポーツ科学部 | 健康スポーツコース スポーツ文化コース スポーツ医科学コース | スポーツ教育コース トレーナーコース スポーツコーチングコース | スポーツビジネスコース |
順天堂大学 | スポーツ健康科学部 | 健康学科 スポーツ科学科(スポーツ医科学コース) | スポーツ科学科(コーチング科学コース) | スポーツマネジメント学科 |
中京大学 | スポーツ科学部 | スポーツ健康科学科 | スポーツ教育学科 競技スポーツ科学科 | |
同志社大学 | スポーツ健康科学部 | 健康科学領域 | トレーニング科学領域 | スポーツ・マネジメント領域 |
立命館大学 | スポーツ健康科学部 | 健康運動科学コース スポーツ科学コース | スポーツ教育学コース | スポーツマネジメントコース |
関西大学 | 人間健康学部 | 福祉と健康コース | スポーツと健康コース | |
京都産業大学 | 現代社会学部 | 福祉と健康コース | 健康スポーツ社会学科 | |
武庫川女子大学 | 健康・スポーツ科学部 | 健康・スポーツ科学科(健康運動科学コース) | 健康・スポーツ科学科(スポーツ教育コース)(スポーツ科学コース) | |
大阪体育大学 | 体育学部 | スポーツ教育学科 | 健康・スポーツマネジメント学科 |
★上記は一例です。
大学生の声
立命館大学 スポーツ健康科学部
M・K さん
「スポーツ健康科学部ってどんな学部?」そう思われる方はきっとたくさんいると思います。「スポーツで実績を持っていないといけないのか」「スポーツ万能じゃないとだめなのか」「科学って付くぐらいだから理系じゃないと大変なのか」全くそんなことはありません。私も運動神経はぼちぼちで文系ですがうまくやっていくことができています。スポーツ健康科学部とは、「スポーツ」「健康」を多角的な視点から考え、実践する学部です。簡単にいえば、「スポーツ」「健康」を様々な方法を用いて発展させていく学部です。また、スポーツと健康のみならず、英語やグループワークなどの授業も充実しています。
私は、スポーツマーケティングを学んでおり、スポーツという手段を用いることによって、地域活性化にどれくらい影響を与えることができるのかということについて学んでいます。実際におこなったこととして、大学のある草津市に存在する少年野球チームを対象とした野球教室を草津市と合同して開催しました。
その企画では、実際にプロで活躍する選手をコーチとして招待し、プロの選手のプレーする姿を観ることによって、子どもたちにスポーツの素晴らしさを知ってもらい、夢や目標を持ってもらう、子どもたちから街を元気にするという企画をしました。私はこのような研究を行いましたが、他にも、身体能力の向上のためのトレーニング方法や食事、着用するシューズやウェアについて研究している人、健康な体をつくるための運動プログラムや、生理学的研究をおこなう人、運動をどのようにすれば子どもたちに楽しく思ってもらうことができるのかについて研究している人、スポーツトレーナーを目指す人など様々です。スポーツ健康科学部では、幅広く、そして自分のしたい事に挑戦できる環境が整っています。特に環境面では、教授や先輩との距離が近く、いつでも話を聞きに行くことができますし、施設も、低酸素室やMRI室、トレーニングルームなど実験するための場所や器具も揃っています。
回生を重ねるにあたり、学ぶ内容も複雑化していきます。例えば、1回生でからだの筋肉の名前を覚え、2回生でトレーニング方法とそのトレーニングがどの筋肉に影響を及ぼすのかを学び、3回生では、学んだトレーニング方法を織り交ぜ、スポーツの競技特性に合ったトレーニングプログラムを作成するというようなことがありました。このように、一つの授業で学んだことが他の授業と連動しています。ですので、授業で学んだことが別の場面においてどのように活かされているのかを常に考えながら学習することが重要なのではないかと考えます。また、この学部で学ぶ分野は、高校までで習うものではないので、1から覚えていかなければならないという大変さもあります。また、元々このような分野に興味があり、トレーニングや生理学に関する知識を持っていたとしても、意外と自分の知識と異なっていることもあるので、知識の修正というところにおいても大変なのではないかと思います。ですが、それは学生が皆抱えていることなので、心配はありません。
私は就職活動を終えました。「健康に携わり、人々のイキイキとした元気な生活をつくる。」という将来像を掲げながら就職活動を続け、就職先も健康に大きく関わる会社につくことができました。「いや、学んだことと全然違うじゃないか」と思うかもしれません。しかし、先ほども少し申し上げたのですが、スポーツ健康科学部では、1つの分野しか学ぶことができないということはなく、「スポーツ」「健康」「教育」「マーケティング・マネジメント」など幅広く学ぶことができます。様々なことに興味を持ち、それらをすべて追求することができます。私は大学での数多くの授業や経験を通じ、「健康」という分野で活躍したいと思うようになりました。将来について考えるのは大変なことですが、この学部での生活で、将来に繋がるきっかけはたくさん転がっていると思います。
今後、2020年に控える東京オリンピックや高齢化社会、子どもの運動能力の低下など数多くのイベントや問題に対して、スポーツや健康について学ぶことは、必ず役に立ちますし、自分自身の活躍の場を広げることができると思います。「スポーツ健康科学部」あまりなじみのない学部かと思いますが、社会に大きな影響を与えることができる学部であると考えています。